アメリカに留学する人の中にはアメリカで就職をしたいと考えている人も多いと思います。ただ実際には簡単に就職先が見つかる訳でもなく、しっかりと準備をする必要があります。
アメリカでの就職サポートを行なっているQuick USA, Inc.さんにアメリカでの就職についてお話を伺いました。
卒業後のOPT(Optional Practical Training)を使っての1年間の就労、VISAサポートを行なっている企業探しから、VISA申請まで、専門家から見たアメリカでの就職を学んでいきましょう。
メジャー選択
日本では就職先で必要な知識を身につけるという考え方があるため、大学の専攻はそれほど重視されませんが、アメリカでは違います。
入社時には即戦力として、会社に貢献していくことを求められます。
アメリカで非移民として一時的に就労するには就労ビザが必ず必要となります。
就労ビザには労働の内容によっていくつか種類がありますが、大学または大学院を卒業した方ばかりの方は、H-1Bビザを申請する方が大多数となります。
このビザは企業等が専門職の外国人労働者を雇用することのできる非移民ビザとなり、専門分野での専門知識を必要とする職となります。
このH-1Bビザを申請するためには、4年制以上の学位をもっているか、その専門分野での一定期間の経験実績が必要となります。また、専攻学科(Major)や経験実績はH-1Bビザの職種と関連があることが必要です。
アメリカでは比較的簡単に専攻を変更することができますが、将来就労ビザを申請し就業したいと希望しているなら、専攻選びは慎重に考えたほうがよさそうです。
アメリカでの就職を考えているのであれば、1年目から、最低でも3年目に専攻を選択する前までにはキャリアプランをある程度立てておく必要があります。
専攻選びも重要で、専門性の高い、IT系・エンジニアリング・数学などSTEM科目や会計学等が就職には有利になってきます。
OPTとは?
記事上で何回かOPTという言葉を使いましたが、馴染みのない人のためにここでしっかりと説明していきます。
OPTというのはOptional Practical Trainingの略で、日本語に訳すと「職業訓練期間」と言えるでしょう。学生ビザで就学している留学生がプログラム終了後に企業で実地研修を行うことができる就労許可です。OPTを使用することで、留学生でもキャンパス外でも有給で仕事をすることができます。
留学生はキャンパス外で有給の仕事をすることが禁止されている中、合法的に仕事をすることができる数少ない選択肢の中の一つです。
注意すべきなのはOPTの使用は専攻に関連した仕事に限られているということです。どんな種類の仕事にも申請できるというわけではありません。
例えば、マクドナルドのレジでアルバイトをするといったことは、専攻との専門性を証明できないのでOPTを申請することはできません。(ITを専攻として取っている人がマクドナルドでプログラマーとして仕事をするということは可能かもしれませんが。)
お金を稼ぐという目的ではなく、学校で学んだことを実地で経験を積むと考えた方が良いでしょう。
お金を稼ぐ方法がないわけではありません。
留学生がこのOPTを利用して一定期間企業などでトレーニングをした後、H-1Bビザなどの就労ビザにステータスを切り換え、そのままアメリカで就労するというのが一般的な流れです。
このOPTにはPre-Completion OPTとPost-Completion OPTの二種類があり、状況に応じて選択することができます。
Pre-Completion OPT(卒業前研修期間)
卒業前でも学期中や休暇中に行うことができるOPTです。
学業に影響を及ぼすことがないようには学期中のOPTは週に20時間が上限として設定されています。
Post-Completion OPT(卒業後研修期間)
学位を取得する際に申請することができるOPTです。Post-Completion OPTは各学位レベルで12ヶ月間だけ認められており、学士号、修士号、博士号取得後にそれぞれ、申請することができます。
一般には12ヶ月が上限ですが、STEM科目を選択している場合には一般の12ヶ月間に加えて、条件が整えば24ヶ月間の延長を申請することが可能です。
STEM教育とは?
「OPT」と同じように、「STEM教育(科目)」を知っておくこともアメリカでの就職において重要です。
U.S. Department of Educationにはこのように書かれています。
These are the types of skills that students learn by studying science, technology, engineering, and math—subjects collectively known as STEM.
(引用:U.S. Department of Education)
STEMと分類される科学・テクノロジー・エンジニアリング・数学の部門は、アメリカの成長において非常に重要な役割を果たしてきました。
今後は今までに増して、より重要となっていくことが考えられており、アメリカの教育において重要視されています。
具体的には以下の分野です。
- 生命科学
- 会計学
- 土木工学
- 心理学
- 統計学
- 電気工学
- コンピュータプログラミング
詳細を知りたい場合にはSTEM Degree Listというウェブサイトを参考にしてみてください。415件の全てのSTEM科目が掲載されています。
企業探し
IndeedやMonsterなどの転職サイトは企業探しに役に立ちます。
他には日本ではまだあまり馴染みのないようですが、LinkedInという職業用SNSがアメリカでは一般的に使われています。LinkedInを通して企業側から連絡が来るといったこともあるそうです。
加えて興味のある会社にアンテナを張っておくことも大切です。企業のウェブサイト上に採用の情報が載っていることがあります。
企業のビザサポート
もちろん自分が就職をしたい企業に就職するというのが第一条件ですが、同じようにビザサポートの有無は確認必須の項目です。
F-1ビザ(学生ビザ)の場合は大学がスポンサーになります。スポンサー(進学先の大学)を見つけない限り、F-1ビザを発行してもらうことはできません。
就職でも同じようにスポンサーを見つけなければなりません。スポンサーが大学から企業に変わるだけです。
ただし、就労ビザのサポートを行っていない会社も多くあるので、アメリカでの就職を視野に入れている人は、 インターン・OPTなどを行う前にビザサポートを行なっているのかどうか確認しておくといいでしょう。
H-1B就労ビザとは?
企業が専門職の外国人労働者を一時的に雇用することのできる非移民ビザの一つです。申請者の多い、最も一般的な就労ビザというのが特徴です。
最初に最大3年間の滞在許可、更に最大3年間の更新が可能であり、年間発給件数は65,000件(一般枠、2017/3/25現在)、修士号枠20,000件となっています。
発行条件
「専門職」というところがネックで、大学卒業時に専門性をもっていると判断されなければビザが発給されない可能性があります。
条件は以下のようになります。
- 職務内容が専門的なもの(Specialty Occupation)である
- ビザ申請者がプロフェッショナルとしての資格をもっている(通常、その専門的能力は学位と専攻によって判断。4年制以上の学位をもっているか、またはその専門分野での経験実績が学士号に相当することが必要)
- ビザ申請者の学位と職務内容が一致する
- その年のビザ発行数が規定数に達していない
H-1Bビザ申請の流れ
年間に発給されるH-1Bビザの数は決まっており、申請者数が発給数よりも多い場合には抽選で対象者が決まります。
経済の景気がよく、企業が多くの人材を採用しようとしている場合には、申請数が増えるため、倍率は上がります。ここ最近には景気が上向きになっているため、発給数よりも申請の数の方が多くなっていて、前年には3倍ほどの倍率があったそうです。
逆に景気が悪く、申請数が少ないときには抽選は行われません。
H-1Bビザの抽選は年に1回行われるため、OPTの延長をすることができないSTEM科目以外を専攻している学生には一回の抽選機会しかありません。
STEM科目は条件が整えば、最大で36ヶ月までOPTを延長することができ、3回まで抽選の機会が増えることから、有利であると言えます。
ただ抽選に通っても審査で却下されるなど、確実にビザの発給が保証されているという意味ではないので、あなたがいかに優秀な人材で、企業が雇いたいと思っていたとしてもアメリカで就労できない可能性があります。
万が一、抽選に落ちてしまい、日本に帰らなくてはいけない場合でも、企業が翌年もビザサポートを行ってくれる場合には日本から申請を行うことができます。
情報の信用性について
Google検索で上位に出てきた情報が必ずしも正しいということはなく、間違った情報も上位表示されることがあります。
記事によっては営利目的に書かれているものもあり、情報が偏りがちです。
信頼する情報なのか自分で判断することが大切です。
Quick USAでは無料キャリアサポートを行っています。専門家から個々に応じたアドバイスを受けることができるので、おすすめです。
企業紹介Quick USA, Inc.
Quick USAは日本に親会社が存在し、1999年に米国法人として立ち上げられました。現在はニューヨークとロサンゼルスに拠点を置いています。
アメリカでの就職・転職サポートを行っています。
特に日本人の就職に特化している訳ではなく、非日本人以外の方にも転職・就職支援を行っていますが、顧客には日系企業が多いです。
日系企業ということから、日本語が必要とされる仕事が多いのかと思いきや、日系企業の顧客は非日本人であることが多いため、日本語はあまり必要としないポジションも多いそうです。
今回は留学BOXの「留学を考えている学生に正しい情報を届けようとしている姿勢」に共感し、情報提供してくださいました。Quick USAさん、貴重な情報をどうもありがとうございました。
協力:Quick USA
インディアナ州のDePauw Universityというリベラルアーツカレッジでコンピュータサイエンスを専攻。現在はIndianapolisのITコンサルティング会社でSoftware Engineerとしてウェブ開発の仕事をしている。