就職は留学生にとって不安定要素で、留学の壁になりがちです。
アメリカの大学は卒業が5月だけど、就職活動はどうなるの?アメリカ大学の卒業単位が認められるの?
留学の経験を評価してくれる日本の企業も増えてきていますが、その企業の情報を得ることに苦労します。
10月にボストンで行われるボストンキャリアフォーラムが企業と留学生にとってのマッチングの機会になりますが、たった3日間ではズレが生じることも多いそうです。
そんな中、設立されたのが株式会社cubridge。日本人留学生にカウンセリングを行い、学生の詳細を把握した上で、その情報をスポンサー企業に公開します。
別の記事に詳細をまとめてあるのでご覧ください。
留学生就職支援マッチングシステム「Cosmogate」とは?
その株式会社コスモゲートを運営する中西さんがわざわざアイオワ州まで来てくださり、就職カウンセリングをおこなってくださいました。セミナーの内容と参加した感想をまとめます。
カウンセリングの流れ
コスモゲートのカウンセリングは
- 自分に合うカードの仕分け・カードの順位付け
- カードを選んだ理由をまとめる – なるべく具体的な体験談を入れる
- 全員でディスカッション – 質問が重要な能力
- 10年後になりたい自分のカードを選ぶ
- カードを選んだ理由をまとめる
- 全員でディスカッション
- 日本についての講義・スポンサー企業の紹介
今の自分
自分に合うカードの仕分け・カードの順位付け
全部で40枚あるカードを「自分に合う」「自分に合わない」「どちらでもない」と3つのカテゴリーに分類していきます。
「自分に合わない」と選択したカードは一切使わず、「自分に合う」カードと「自分に合わない」カードをそれぞれのベスト3を選びます。ここまででセミナー全体の10分ほどです。
カードを選んだ理由をまとめる
次のディスカッションのために「自分に合う」カード、「自分に合わない」カード3枚づつそれぞれのカードを選んだ理由を紙にまとめます。
用意された用紙にまとめるときに重要なのは、過去にあった自身の経験を思い起こし、なぜ自分がそのカードを選ぶに至ったのか具体的な経験談を探すことです。
体験に裏付けすることで、今の自分の意思はどこからきているのか理解することができます。
この段階ではその裏付けられている体験談を探すことが難しいので次のディスカッションを通して、より深いところまで自分自身を理解していくことになります。
全員でディスカッション
理由をまとめ終えると、なぜそれを選んだのかという理由を他の参加者の前で説明します。一人7分間の持ち時間が与えられます。
アイオワ州でのセミナーは5人の参加者とカウンセラーの中西さんの6人だったので、ディスカッション全てを終わらせるのに42分かかりました。
もちろんこのディスカッションにおいて、理由を説明する側は重要ですが、質問する方も良い質問をするようにと、中西さんはおっしゃいます。
企業に就職後、物事を効率よく学んでいける人は上手に質問をできる人です。良い質問をすることで、先輩からのアドバイスを受けやすくすることができます。
潜在意識として自分の中に貯めていたことを人前で発言することで、客観的な意見を他の人から得ることができます。時には言っていることに矛盾が見つかってしまうこともありました。
こういった質疑応答を通して自分自身への理解を深めていきます。
将来の自分
10年後になりたい自分のカードを選ぶ
今の自分に当てはまるカードを選んだときとは違い、10年後は「なりたい自分」当てはまる上位3つのカードのみを選択します。
ほとんどの人が初めに選んだカードとは別のカードを選んでいました。
カードを選んだ理由をまとめる
なぜそのカードを選んだのか、経験談を含めつつディスカッションのための準備を紙にまとめます。
全員でディスカッション
再び全員でディスカッションを行います。
質問の仕方にも慣れてきて、鋭いコメントが入ることも度々。ここでもまた将来の夢に向けて、今自分がやっていることの矛盾が見つかることもありました。
質問された方は答えを探すのに苦労していたようでしたが、自分を見つめ直す良い機会になったのではないかと思います。
日本についての講義・スポンサー企業の紹介
日本についての講義
カウンセリング終了後には日本についてのミニレクチャーを受けました。
国際社会で生きていく為にはまず自国の文化を理解していなければならないという考えからです。
日本には素晴らしい文化・技術力があるのに新しい製品がなかなか生まれてこない。この問題を中西さんはアイデンティティの欠如が原因だと言います。
新しい製品のイメージはあるのに、それを言葉にできないから製品そのものが生まれてきません。
日本の鳥居を空き地の設置し、ポイ捨てを減らすという製品を例に、日本人に根付いた文化の話もしてくださいました。
スポンサー企業の紹介
現在2つの企業がスポンサー登録をしており、これから10社までスポンサーを増やそうとしているところだそうです。
実際に登録している企業の名前・その業務内容・年収など説明してくださいました。
アンケート用紙の記入
最後にカウンセリングを振り返り、アンケートに記入して終了です。専攻・大学名・自分の能力についての自己評価・感想・情報公開の許可などを記入します。
年に1度程度カウンセリングを行うことで、自分の成長・考え方の変化を確認することができます。
個人情報を公開することを心配する人は書類の情報公開のところへ署名をしなければ、企業へと情報が公開されることはありません。
カウンセリングの目的・利点
日本人の学生は海外の学生に比べるとかなり内向き志向です。ここでは内向き志向を「自分を表に出さない、自分を表現しない傾向のこと」と定義します。
他の国の学生を見ていてときどき、彼らの「伝えたい」という意思にとても驚くことがあります。例えば今学期から大学に在籍しているロシア人の学生は質問されていなくても、自分のことやロシアのことを話します。
あまりに意思が強すぎて、他の人の話を遮ってしまうことも度々です。
コスモゲートのカウンセリングでは人間力=アイデンティティをつけさせることを大きな目的の一つとしていました。
人間力というのはとても曖昧な表現ですが、ここでは自分を主張して行くことができる力のことを指します。一般的に日本人の苦手とする分野ですね。
この人間力(自分を主張していく力)が国際社会でビジネスを行っていく中で欠かせないと中西さんは強く訴えます。
アメリカの大学においては自分を主張することを頻繁に求められるので、留学経験の長い学生においては慣れていることですが、渡米して間もない学生は苦労しているようにも見えました。
まとめ
前回の記事では就職セミナーと表記をしましたが、就職カウンセリングといったほうが正しかったのではないかと思います。
他の人から就職について教わるインプット形式のセミナーが多い中、このカウンセリングは完全にアウトプット形式で行われました。
国際人になるための人間力を身につけつつ、将来の方向性を考えていくことができる良い機会になったのではないかと思います。
アメリカでの就職に限ってはこの記事の情報が参考になります。アメリカに進学を考えている人の中にはアメリカの就職を考えている人も多いのではないかと思いますが、日本での就職に比べて格段に難易度が上がります。

インディアナ州のDePauw Universityというリベラルアーツカレッジでコンピュータサイエンスを専攻。現在はIndianapolisのITコンサルティング会社でSoftware Engineerとしてウェブ開発の仕事をしている。